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野球の化学的考察シリーズ『インパクト時の押し込みは可能なのか?』について解説していきます。

野球をやったことのある人なら、「ボールを押し込んで打て!」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。

しかし、ボールがバットに接地している時間は極めて少ないはずなのに、本当にそんなことが可能なのか?という疑問が湧きますよね。

 

そこで、この記事ではその疑問を調査し、『本当に可能か?』という事を理論的に解説していきます。

 

 バッティングの前の基本をご覧になっていない方はコチラからお読みください。

 

バッティング〜フォーム編〜はコチラ

 

化学的考察シリーズはコチラ

 

 

ボールを押し込む

インパクト時にボールを押し込めという言葉はよく使われるし、よく聞いたことのある言葉だと思います。

しかし、

野球小僧野球小僧

わずかコンマ数秒の世界の最中にそんな事が本当に可能なのか?

と筆者はいつも思っていました。

 

押し込むとは一般的に、「ボールがバットに当たる瞬間(インパクト)にバットを握った手で押し出す」という感じで使われることが多いでしょう。

 

そこで、力、振動、接触時間などを洗い出し、分かりやすく解説していきます。

 

力関係

まず力関係ですが、スイング時にバットを握る力は、ヘッド側を『3』とした時に、グリップ側は『2』という力関係になります。

※なぜヘッド側が強いのかというと、スイング時は遠心力が働くため、ヘッド側の方が力は増していくのです!

 

 

上記の力に対して、インパクト時にボールとバットの間で作用する力は、最大で『270』にも達するのです。(約90倍〜100倍)

 

各バットの打球速度の研究結果

また、金属バットと木製バットそれぞれを万力でしっかり固定した場合と緩く固定した場合で、ボールを衝突させた際の打球速度を調査した研究があるのでご紹介します。

※下記単位m/sは、メートル毎秒で打球速度を表している。

<金属バットの場合>

  • 万力固定….約8.9m/s
  • 固定なし….約7.1m/s

<木製バットの場合>

  • 万力固定….約9.1m/s
  • 固定なし….約8.8m/s

 

この研究では、金属バットを緩く固定した場合にはしっかりと固定した場合と比べて打球速度が低下していますね。

ところが、木製バットではどちらの場合もほぼ同じであり、あまり差がなかったとの研究結果が出ています。

 

振動が伝わる時間

硬式野球の場合では、

  1. インパクト

    バットとボールの接地時間は約1.2ms

  2. 手に伝わる振動

    インパクト後、振動が手に伝わるのは0.6msあと

  3. 振動が再び打撃部分に戻る

    手に伝わった振動が、再び打撃部分(ヘッド部)に戻るのに1.2ms

 

つまり、インパクト時の衝撃が振動となってグリップ部分に伝わる時には、ほとんどの力積がボールに伝達し終えていると考えられています。

 

したがって、バットにボールが衝突した(インパクト)と感じたときにはすでにボールはバットから離れようとしているという事なのです!

 

結論

これらを踏まえると、ボールとバット間の衝撃力はバットを把持する力よりもかなり大きく、同時に接触時間も極めて短いことから、

 

バッターがボールを押し込むことは不可能に近い!

 

ということが考えられますね。

 

つまり、「ボールを押し込む」という感覚は、インパクト直前のバットと手の動作が影響しているのではないかと考えられると思います。

 

ただ、ボールとバットの接地時間が長い軟式野球や、バントのようにインパクト位置に近い部分を握ることで振動の伝達時間を短縮できれば、打球に手の影響(押し込む動き)をおよぼすことは、理論上可能というふうに言えます。

 

まとめ

よく言う「ボールを押し込め!」のセリフが現実的ではないというのが理解頂けたでしょうか?

 

理論的に考察すると硬式野球では、ほぼ不可能なんですね。

おそらく「押し込め」という言葉を使っている指導者や選手は、感覚だけで語っているのではないでしょうか?

「インパクト時に押し込め!」ではなく、「インパクト直前に押し込め!」が正しいということですね。

 

筆者的には、大学生や高校生くらいなら、この「インパクト直前に押し込め」は指導しても良いかと思いますが、小学生や中学生には必要ない指導だと思います。

何故なら、スイングの基本が出来ていなかったり,力のついていない子がインパクト直前に押し込もうとすると、手首が要らぬ方向に動いてしまったりと余計に悪い方向に行きがちだからです。

 

ですから、押し込むという感覚ではなく、リスト(手首)や握力の強化を行えば自然とインパクトのときに力を発揮するようにできるでしょう。

 

この考察を踏まえて、バッティングについて、もう一度よく考え直してはいかがでしょうか?

一つの考えを捨てる・変えることで、新たな考えが閃くかもしれませんね。

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